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パリの大泥棒のHKのレビュー・感想・評価

パリの大泥棒(1966年製作の映画)
3.7
25歳にして『死刑台のエレベーター』で長編映画デビューしたルイ・マル監督の34歳のときの作品。
主役のジャン=ポール・ベルモンド(当時33歳)と組んだのは本作1本のみです。
ベルモンド主演でこのタイトルだとルパン3世のような軽快なコメディを思い浮かべてしまいますが、意外や20世紀初頭のパリが舞台ですから、むしろ初代ルパンの時代のクラシカルな泥棒劇が時代考証もリアルに淡々と描かれた作品でした。
本作でのベルモンドもルパン3世よりはルパン1世に近いテイストかもしれません。

あるきっかけから自分の泥棒としての素質に気づいた主人公ランダルは、盗みを重ねめきめきと腕を上げ、泥棒仲間の間でも頭角を現していきます。
本作でのベルモンドの盗みは、バールを使って扉も箱も何でもバリバリとこじあけガラスケースも叩き割るという、優雅さやスマートさとは無縁のスタイル。
それが妙にリアルに感じられて印象的でした。

女優陣は若きジュヌビエーブ・ビジョルド、マリー・デュボア、マルレーヌ・ジョベールら美人揃い。
とくに主人公が愛する従妹シャルロットを演じるビジョルド(当時24歳)はこんなにキュートだったっけとビックリ。
同時期の『まぼろしの市街戦』は何度か観てますが、ビジョルド(美女ルド?)をあらためて確かめてみたくなりました。

本作は良くも悪くもベルモンドの出演作がある時期から人気スターのワンマン映画になる前、名匠たちとじっくり組んでいた時代の貴重なテイストの作品のひとつと言えそうです。
いくら金持ちになっても盗みのスリルと達成感を求めてしまう、盗みのプロの虚しさと物悲しさがなんとも言えない余韻を残します。

スター・チャンネルはたまにこういう未見で未デイスク化の作品をやってくれるからズルズルと続けてしまい解約できません。
HK

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