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関の彌太ッぺのkoyamaxのレビュー・感想・評価

関の彌太ッぺ(1963年製作の映画)
4.3
いったいどうした!?
と、前半と後半で容貌が大きく変わる中村錦之助主演作。

名前の響きで勝手にはっちゃけ喜劇かと思ってましたが違います笑 (すいません)

渡世人の彌太郎こと彌太っぺは生き別れの妹を探しに旅に行く途中で、盗人の父と死別しひとりぼっちになってしまった少女と出会います。

その少女に妹の面影を重ねるのですが…。


前半は青年彌太ッぺは絵に描いたような明るくいなせで涙もろい渡世人といった感じです。

本来自分の妹を引き取る為に用意した大金を使い、少女を縁がある旅籠へ預けることになるんですけどね。。


諸事情を経て…



後半は一気に十年後。


その間一体何があったんだ!? 
と、前半の明るい雰囲気から一転、彌太っぺは助っ人稼業という名の人斬りに身を窶し、ダークな人相に成り果てます。


生きる希望を失い、壮絶な世界を歩いてきたのだと感じさせる容貌。

この変わり加減がやりすぎといえばやりすぎなんですけども。。笑



闇堕ちしてもなお、変わらず人を想う尊さ。そんな気持ちが垣間見える描写がスッと入り込み、その度に自分の普段触れらない心の柔らかい場所の在処に気づかされます笑

偶然出会って助けた人の幸福を10年経てもなお影で願い、自分はただひとり死地へ赴く。
正体は明かせず渡世人として生きる事のはかなさと寂しさを感じるとともに譲れない男の生き方を感じるクライマックスです。


最後に心を揺さぶるのは娘への無償の愛とともに、
「この先、きっといい事にならない。
そんなことはわかってるんでしょうけど、
でも、行くしか無い。」
宿命に決着をつける男の心意気です。


価値観としてはやせ我慢で古い。

のだとはおもいますけど、、、
何があっても信念を貫く後ろ姿。
背中に背負う哀愁と気高い精神。
ラストのセリフも奇を衒わないものだからこそ、例の柔らかい場所へ刺さります笑
涙がでるほど。
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