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サンダカン八番娼館 望郷のぶどうのレビュー・感想・評価

サンダカン八番娼館 望郷(1974年製作の映画)
4.5
田中絹代という女優さんの神がかり的なお芝居に圧倒された。というか観ている最中はお芝居をみている気さえしない。あたかもその人物が実在している様な。すごい

おさきさんという老婆が、過去にからゆきさんとして東南アジアへ渡り、壮絶な半生を送った。それを本人には黙って研究対象として聞き取り調査を行った、貧しい女性の研究をしている女性学者。この2人を軸にストーリーは進む。

やるせない気持ちになった。こんな悲しいことあるかよ!年端もいかない女の子が訳もわからず外国で売春させられて、しかも必死の思いで帰国してみれば、家族には "恥" と思われて厄介者扱い。帰国してもしなくても "地獄"だったのだ。
からゆきさんは江戸末期〜昭和初期まで続いていたというが、そんな長期間に渡ってこんな事があったのかと暗い気持ちになった。

おさきさんは晩年、バロックよりもひどい廃屋のような家で1人暮らしていた。そこへ女性研究者が訪れ、3週間滞在する。ぼろぼろのむしろを板の上に敷いた床と、ぼろぼろの障子、戸、襖。むしろの下にはムカデが多数這っている。
終盤、騙して聴き取りをした罪の意識か、廃屋から人が住めるような家に修繕する研究者。新しい敷物を敷いた上で心から嬉しそうに喜びとびはね、御殿のようだとはしゃぐおさきさんにたまらない気持ちになった。ひくほど泣いてしまった。視聴後も気持ちの持って行き場がなく涙もなかなか引かなかった。観てみて良かった。

一点だけ。時代だから仕方ないのだろうけど、少女が性サービスをさせられる悲劇の物語なのに、その少女のヌードはいらなかった。
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