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サンダカン八番娼館 望郷のcinemakinoriのレビュー・感想・評価

サンダカン八番娼館 望郷(1974年製作の映画)
4.1





“うちは女であって女でなか”







知っておくべき日本の恥歴のひとつを題材にした、とても意味のある作品。

終始眉間に皺を寄せながら観ることになるが、目を背けるべきではない史実を素晴らしい女優さんたちの悲哀に満ちた名演で描かれている。


“からよしさん”と呼ばれる貧困売春婦を斡旋する、いわゆる“ぜげん”の胸糞商売。
望まずして国を離れ、家族にさえも売春を強いられながら生き抜く強き女性たち。

田中絹代のリアリティ溢れる名演に、まず心を抉られること間違いない!
演技を超えた説得力と共に、切なく儚げな眼差しに、強さと優しさを併せ持った女性の偉大さを痛切に感じることとなる。

また、
若き日のサキを演じた高橋洋子に至っても、図らずも“女”と成っていく皮肉な過程を、狂気的な熱演に魅了され言葉を失う。

この名女優お二人の圧倒的な演技によって、日本の隠したがる恥歴を切実に遺してくれている事の偉大さを噛み締めると共に、原作者の偉業も構成として織り交ぜている描き方は本当に素晴らしい。
非の打ち所がない!


タイトルにある【望郷】が、あまりにも皮肉めいており、感じたことのない憤りの涙が流れてくる。
観るには辛い内容だが、確実に観ておくべき史実作品のひとつだろう。







現代。
SNSで蔓延る美人局的少女斡旋クズ商売や、安易に身を売るパパ活女子共が絶えない世の中。
この作品で再現されている当時の強く美しい女性たちの心情を、彼ら彼女らの目には一体どう映るのだろうか、、、
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