三四郎

昭和のいのちの三四郎のレビュー・感想・評価

昭和のいのち(1968年製作の映画)
3.0
五・一五事件をベースに描いてあるはずだが、結局、日活特有のヤクザものとして終わる…。どうして日活は重く深いテーマになりそうであっても、描き切らず、いや描ききれずヤクザの闘争で片付けてしまうのか…。脚本家が低レベルなのかしら。

唯一、共感できるシーンがあったが、陸軍中尉高橋秀樹が風呂に入り、左翼青年浜田光夫が外にいるシーンだ。
陸軍中尉高橋秀樹が左翼青年浜田光夫に言う科白。
「僕とあんたは正反対の考えだが、倒す目標は同じかもしれんな」
竹山道雄が名著『昭和の精神史』で書いていたことと同じ思想だ。
五・一五事件、ニ・ニ六事件を起こした青年将校(軍人)と共産主義青年(赤/左翼)は、主義主張は正反対でも、実は根本的なところで通じるものがあるということ。国家を憂い、財閥、政治家、ブルジョワ…を憎み、農民、労働者…を哀れみ彼らに同情する。故に革命を起こそうとする。両者の違いは一つだけだ。武器を持っていたか否か。
両者とも考えの浅い、社会の表面しか見えてない真面目なロマンチストだ。直情型バカ。

賭博好きの医者を演じる岡田英次が大学医学部を卒業した頃の夢と理想に燃えていた自身の青年時代を語るシーンも良かった。あれが真実だろう。
優秀な若き青年医師は進んで、好んで、貧しい人々の中に入り治療を行った。しかしあまりの環境の酷さ・貧困、その現実に打ちのめされ、夢と理想は消え果て酒に溺れ賭博に手を出し身を滅ぼしていった…。
何故、頭が良いはずの人は、夢ばかり見るのだろうか。理想に生きるのか。
とは言いつつ、荘子が好きな私もロマンチックな理想主義者だ笑
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