ぽち

ブワナ・トシの歌のぽちのレビュー・感想・評価

ブワナ・トシの歌(1965年製作の映画)
3.4
ドキュメンタリーの手法を取り入れたユニークな撮り方で、出てくるアフリカ人はみな素人というより、映画というもの自体を理解していない人々で、粗削りな感じはあるものの、ドラマは良く出来ていて楽しめる作品。

渥美の寅さんっぽくないキャラクターというのも良く、役者として実力があったことが伺える。

ただ、やはり「ドキュメンタリー」を得意とした羽仁監督の悪い面も出てしまい、各シーンのつながりが悪かったり、台詞がしっくりこなかったりしている。

それにキリンに道を塞がれるとか、ゾウに襲われるという動物との絡みが上手く撮れていないので、かなりぎこちないところが多い。

そして、一番のマイナスが題名にもなっている「歌」のシーン。
音の作り方がセンスが無さすぎて、ここが一番盛り上がるはずなのに一気に白ける。
多分、その「歌」というもの自体が上手く録音できなかったのだろう。いらない音を重ねたり、恥ずかしいほどのリバーブをかけたり、苦肉の策と思うが、一番大切な所。気合を入れて作ってほしかった。

ラストは良い余韻を残す。
当時の日本映画でもエンドロールが入るのは当たり前だったのだが、エンドロール無しのいきなりの「終」。これがその直前の二人の乾いた別れのシーンを見事に引き立てていた。

「変わり種」的な作品ではあるが、観ごたえはある。


余談。
最近はあまり聴かなくなったが、感動的なシーンでア・カペラで歌う時に、ホールで歌っているかのような残響音。

昔はこれが当たり前だったなぁ~、と懐かしくはあった。

デジタル・リバーブが一般人が買える値で出てから、何でもかんでも残響音で豪華にしたり、誤魔化したりって曲が多かったが、ここ10年ほどで影をひそめて、今では素人PAとか自主製作などで見かける程度になった。

でも、昔っぽい音も好きだったりするんだな、これが。笑
ぽち

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