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ウェルカム・ドールハウスの一人旅のレビュー・感想・評価

ウェルカム・ドールハウス(1995年製作の映画)
4.0
トッド・ソロンズ監督作。

いじめられっ子な女子中学生の日常を描いた青春コメディ。

トッド・ソロンズの監督デビュー作となった脱力系青春コメディで、ニュージャージー州の郊外で暮らす地味な女子中学生:ドーンの鬱屈した日常を手厳しくもユーモアを交えて映し出しています。

低予算ながらヒットを記録した『ナポレオン・ダイナマイト(旧題:バス男)』(04)の女子版とも言える脱力系青春コメディ。クラスメイトにいじめられ、家族からも見放されている陰キャラ女子の日常を描いたものですが、ダメダメだった主人公の人生が最終的に好転していく他の青春映画とは違って、本作の場合、いいことがまるでない踏んだり蹴ったりなヒロインの悶々とした日常を全編に亘って淡々と映していきます。

青春映画における大切なテーマである“自立と成長”をあえて外した作劇がミソで、死ぬほど恵まれない中学生活を過ごしている孤独なヒロインの並々ならぬストレス耐性には思わず拍手を送りたくなります。学校や家庭でひたすら辛い目に遭い続けるヒロインは余りにも可哀想ですが、当の本人はそんな自分に嫌気が差しながらも、あくまでマイペースを貫いた言動を見せます。普通の人だったらあんな仕打ちを受けたら即日不登校にでもなりそうなものですが、本作のヒロインは周りの人々からの理不尽な扱いにもめげずに耐え続けます。そうした鬱屈した日常の中で、年上のイケメン高校生への恋心や性体験への興味と欲望、同級生の不良少年との関わり等、ヒロインの心の機微をユーモラスに捉えています。おやつを黙々と食べるイケメン高校生を嘗め回すように眺める姿や、不良少年にレイプ宣告されながらも心のどこかでそれを望んでいる姿がユーモラスですし、妹が大切にしているバービー人形の首をノコギリで切断しようとしたり、寝ている妹を金槌で殴り殺す素振りを見せたりする等、誰からも相手にされないヒロインの危うい感情もリアルに描写しています。

主演のヘザー・マタラッツォは本作で映画初主演ですが、絶望的ファッションセンスの陰キャラ眼鏡女子をナチュラルに好演していて、『ナポレオン・ダイナマイト』のジョン・ヘダーと似た匂いを漂わせています。
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