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サランドラのnetfilmsのレビュー・感想・評価

サランドラ(1977年製作の映画)
3.8
 トレイラーの事故のため、砂漠の真ん中で立往生する一家。だが核実感施設にほど近いその荒地には、突然変異を起こした野蛮な食人一族が住んでいた。1977年に製作されたクレイヴンの『鮮血の美学』に続く2作目。これは明らかにフーパー『悪魔のいけにえ』のヒットを念頭に置いたいかにも二番煎じなホラー映画である。冒頭のガソリン・スタンドに立ち寄る設定が非常によく似ているし、誰も助けにこないような荒涼とした土地で次々に殺されていく場面もとても似通っている。『悪魔のいけにえ』ではヒッピー崩れの若者たちが犠牲になったが、こちらは鉱山を探しに来た元警察官の一家が次々に襲われる。違うのはこちらは二匹の犬がいることくらいだろう。『悪魔のいけにえ』では殺人鬼のテリトリーに迷い込んでしまい、一人一人分断されることで悲劇に遭うが、こちらはワゴン車ではなく、キャンピングカーに立て篭ることで事なきを得る。文明に触れた一家に対して、突然変異を起こした非文明的な原始的な俗物の理由なき残虐性が持ち味なのだが時間が経過するごとに段々と恐怖心が薄れてしまう。確かに最初に荒れた岩山に引きずり込まれた時の殺人鬼の得体の知れなさは怖かったし、それ以上に夜の闇に紛れる殺人鬼の気配があまりにも怖かった。

 しかし彼らが赤ん坊をさらうあたりから、結局彼らは食人一族でありながら、人間を食わない一家なんだと徐々に気付き始める。元警察官で今は探偵をしているというお爺さんは丸焼きにされたし、お婆さんもナイフで刺し殺されるのだが、食人一族なのにどういうわけか死体はそのままの状態で立ち去ってしまう。自動車が横転して、キャンピングカーで車中泊しなければならない設定がホラー映画としては作劇上、好都合だったにもかかわらず、主人公たちを殺さないまま、朝を迎えてしまう。また一晩明けると、前日には殺戮の恐怖の只中にいた家族が、彼らを倒しに山に向かうのには笑ってしまった。食人一族なのに赤ん坊を食べずに一晩取っておいたばっかりに、朝になったら赤ん坊を取り返すために今度は逆に主人公たちに反撃される。今作は77年製作ながら、日本公開は84年と7年も遅れを取ることに。その結果、『サスペリア』にも『サンゲリア』にも抜かれ、原題は『THE HILLS HAVE EYES』ながら、どういうわけか『サランドラ』になってしまった。しかも公開時には「ジョギリ」なる凶器も生み出され、いったいどんな武器なんだろうとドキドキして観に行ったら、映画の中にまったく出て来なかった苦い思い出がある 笑。
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