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パンチドランク・ラブのambiorixのレビュー・感想・評価

パンチドランク・ラブ(2002年製作の映画)
3.8
「なんだかよくわからない変てこな映画」が居並ぶポール・トーマス・アンダーソン監督のフィルモグラフィーの中でもひときわ変てこな作品。薄暗い倉庫の隅っこにぽつねんと佇む男、大通りでクラッシュする車、男の真ん前にデンと置かれるピアノ…なんの脈絡もない出来事が矢継ぎ早に繰り出されるオープニングシークェンスの時点で早くもただごとじゃない感じ、なんかやばい映画が始まったぞ、という気持ちにさせられる。常に不安を煽ってくるような劇伴の使い方も印象的。しかしながら、同時にこれがロマンティックコメディであることも間違いなく、「運命の女と出会ってしまった内気でうだつの上がらない男が自己を変革していくさま」という、ラブコメの王道ともいえるプロットをカリカチュアライズして描いていて、ラブコメ映画にアヴァンギャルド映画的ノイズが混じったというかべきか、あるいは逆に、アヴァンギャルド映画にラブコメ映画的ノイズを混ぜたような絶妙なバランスが面白かった。
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