エジャ丼

パンチドランク・ラブのエジャ丼のレビュー・感想・評価

パンチドランク・ラブ(2002年製作の映画)
4.7
「それは、目が眩むほどの一生にたった一度の恋」

ロサンゼルスでトイレのスッポンの卸売会社を経営するバリー・イーガンは、口のうるさい姉たちに囲まれ育ったため女性不信で、おまけに情緒不安定だった。ある日、姉の同僚リナと知り合い、少しずつ好意を抱き始めるバリー。彼女との関係も上手くいき始めた束の間、ある夜にかけたテレフォン・セックスが、思いもよらぬトラブルを巻き起こしてしまう…。

面白かった。特別かっこいいわけでもなく、むしろ人間性にやや問題がありそうな、ごく普通の男であるバリー。そんな彼が一生に一度の恋に落ちる様子を描いた映画。と聞くと、なんてキラキラしたお話なんだ!と思うけど、実際は全然そんなことないのがすごくいい。ポスターのシーンみたいに、画的にとても美しい場面はもちろんあって、バリーとリナの純粋な愛情が表現されていると思うが、個人的にはそれ以外のギャップの部分が妙にリアルで、とても気に入った。

意中の人がいたとしても、それとは別で自分の欲求の赴くままに行動してしまうこと、またそれが招いてしまったトラブルになぜか強気に出てしまうこと、そしてそれは、自分史上最高の恋をしているこの状況がとても心地よく、根拠こそないが強さは絶大の自信が湧き出てきたからなのだといったように、鈍臭い男が彼なりに奮闘している様子が見て取れるのが非常に愉快だった。長回しを多用してバリーのありのままをできるだけ捉えているのも理由の一つだと思う。あとは、物語にチンピラと銃が出てくる意外性もまた然り。

ポール・トーマス・アンダーソン、めちゃくちゃ良い。美しい映画をありがとう