ちか

精神のちかのレビュー・感想・評価

精神(2008年製作の映画)
4.2
岡山で生活保護受給者を対象にしている精神診療科で監督が患者や職員の姿を映し出す。患者はすべて顔出ししており、よくあるモザイク入りでは感じられない、生身の人間性が伝わってきた。監督に自らの半生を滔々と語る彼らの話しぶりと裏腹な彼らの言葉の重みにちょっとずつ荷が増えて行くような感覚があった。医師を仏様のようだと慕い、詩をよみ、職員と笑いあう彼らをみると、繊細すぎたのだろうなとおもう。ラストの、同情心にひたる観客を振り落とすかのようなある患者のふるまい。傍にいた職員のやるせなさは、きっと日常的なことなんだろうと思わせる。急に両者に溝があること、理解しあうことが決して容易ではないことがあることを突きつけられる。(もちろん精神病患者の性格に個人差があるので、患者でなくても人間同士わかりあうことは難しいが)それでも本当に彼らに向き合う勇気があるのか、と試されていた。
ナレーションをいれず、言葉にすべて語らせない監督の手法が、観るものに解釈の余地を与えてくれた。
ヘルパーさんが患者に掃除をするように言ったり料理を教えたりする場面があった。すぐに習得できないこともあるし、そもそも彼らは生活への意欲がある訳じゃないので、決して楽な仕事ではないだろうと思った。
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