半兵衛

下郎の首の半兵衛のレビュー・感想・評価

下郎の首(1955年製作の映画)
5.0
冒頭の現代の風景を捉えたシーンの長回しが1955年とは思えないくらい複雑なカメラワークを駆使していて一気に映画の世界に引き込まれ、以降も要所要所で巧みな撮影テクニックが使用されているのに驚かされる。撮影を担当した平野好美氏はこれと「西鶴一代女」で超一流の撮影を披露し、日本を代表するカメラマン宮川一夫からも絶賛されている(残念なことに、平野氏は1961年に所属していた新東宝が倒産してからすぐにカメラマンを引退した模様)。

メインである下郎の田崎潤と妾暮らしをする嵯峨三智子は悲劇のキャラクターというよりコミカルなキャラクターとして描かれていて、微笑ましく見ていられる。田崎を好きになった嵯峨とそれに今一つぴんとこない田崎のやりとりも笑わせる。だがそれが後半の悲劇を一層重くさせる。
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