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トレインスポッティングのEyesworthのレビュー・感想・評価

トレインスポッティング(1996年製作の映画)
4.5
【レントンの異常な愛情 とりっぴぃは如何にしてヘロインを辞めて空を飛んだのか?】

ダニー・ボイル監督がイギリスで制作した1996年の青春ドラッグ映画。主演はユアン・マクレガー。

〈あらすじ〉
舞台はスコットランドのエジンバラ。レントン(ユアン・マクレガー)は普通の人生を送るのが嫌で、現実から逃れるようにヘロイン中毒に陥っており、仲間も薬物や犯罪に溺れながら意味のない日々を送り続けていた。何度も薬物を断つ決意をするものの、毎度その薄弱な意志は打ち砕かれてしまう。ヘロイン断ちを繰り返し、レントンを含めた中毒者三人はようやく”禁ヤク”を本格的に始めることに。しかし、ヘロイン無しの味気ない人生を送る気にはならない。セックス、ドラッグ、バイオレンスにまみれた日々だが、果たしてレントンはこの腐った日常から抜け出せるのだろうか…?

〈所感〉
ドラッグ、セックス、バイオレンスの三拍子揃った痛烈な内容の青春映画だが、軽快な音楽もあってか不思議とスタイリッシュで爽やかな印象を与えてくれる。冒頭のスコットランドで一番汚いトイレの中に座薬を取り戻しに入っていくレントンを見てこれは面白い映画だと確信をもらう。当初はあんな汚いトイレも海に繋がっているのかと純粋に見てしまったが、あれはレントンの幻覚だったのか。またレントンとつるんでいるシック・ボーイ、ベグビー、スパッド、トミーら仲間たちのどうしようもなさにも笑える。まともな神経をしている人間がいないので共感は難しいが、典型的な90年代の青春を描いており、誰しもこんな荒れ方しないとやっていけないほど不景気な世の中だったんじゃないかと想像する。けれども私のようなZ世代からすると、あの時代の若者は皆ギラギラしていてカッコいいので憧れる。それ以降の世代にあの輝きはない。いつから受験、就職、結婚のお決まりのレーンに載せられていたのだろうか。レントンの禁断症状による幻覚は現実からの呼びかけ、召集令状のようで恐ろしい。何度足を洗っても仲間から離れてもやはり戻されるヘロインの束縛。この逃れられない網から最後立ち上がったレントンはどんな普通の将来を描き始めるのか。異常の陳腐さ、普通の尊さを学べる薬物入門の教科書であった。「トリッピー」は薬物用語で、「薬物などによるトリップのような」という意味だ。しまじろうに登場するとりっぴぃもヘロイン中毒だったが、親や兄弟のために禁ヤクして飛行能力を手に入れたのかもしれない。お調子者で口が軽いのはその名残かもしれない。
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