イペー

アメリカン・ビューティーのイペーのレビュー・感想・評価

アメリカン・ビューティー(1999年製作の映画)
4.3
きれいはきたない、きたないはきれい!

典型的なアメリカの白人家庭を通して描かれる、"美しさ"に関するドラマ。

一見した限りでは最大公約数の理想を実現しているレスターの家庭ですが、レスターを始め、彼の妻と娘、娘の友人、隣家の家族、皆が問題を抱えています。

程度の差や、形の違いこそあれ、それぞれが直面するのは"美しさ"に対する向き合い方。生き方の問題とも言えますが、物質的に満たされているのが前提ではあります。
日本に置き換えても、それほど違和感は無いかもしれません。

物語が進む中で、各人の美意識がゆっくりと外側に滲み出し、時に衝突してギリギリと軋みを立てる有り様を、丁寧に、そしてユーモラスに描いていきます。

秘すれば花、なんて言葉もあります。登場人物の誰もが心の内に欲求を押し留め、違ったアプローチで、その欲求を外に向けて解放しようと悪戦苦闘する。自らの美意識に忠実であろうとするあまり、お互いに傷付け合う人々。

隣家の息子リッキーは純粋な賛美者。物事をありのままに捉え、美しさの本質に近づいているかの様に見えます。
そんな彼も一番近い父親とは、理解し合う事が出来なかった。

レスターだけが死を目前にして、答えを手に入れたようです。ケビン・スペイシーの演技がとにかく素晴らしい。静かな変化にも、異様な説得力を感じました。彼が迎える結末によって、問題は観客に投げかけられます。この作品をどう捉えるか。

自分は特別なものを内側に抱える程、美意識の高い人間ではありませんが、ラストシーンが胸に迫って、自然と涙が浮かびました。
あらゆる物事に対して、簡単に美醜の判断を下すことの無いよう、本質を慎重に見極めたいですね。

冒頭に掲げたのはマクベスの一節。もちろんマクベスは読んでません。
自分、教養があると思われたくて…。
このように人間は外側を取り繕って生きているんですね!(開き直り)
イペー

イペー