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サイレント・パートナーのRのレビュー・感想・評価

サイレント・パートナー(1978年製作の映画)
4.4
おおーーー👏 面白かった! 二転三転する愛と裏切りの銀行強盗サスペンスが展開していくのか⁈ と思いきや! 銀行員による横領サスペンスでした! 主人公のマイルズカレンは、ショッピングモール内にある銀行で出納主任として働いている、何の変哲もないごくごく普通のサラリーマン。いい年こいて未だ独身(70年代の映画なので現代とは感覚が異なっていることに注意)、同僚のイイ女(?)ジュリーを口説くこともできない彼は、熱帯魚を育てる趣味に熱を上げている。折しもクリスマスシーズンで混雑する職場、ひょんなことから銀行が強盗される計画を事前に察知したカレンは、それに先んじて、ひそかに大金をカウンターの下の自分のカバンの中に隠しておき、犯人には計画通りの銀行強盗をさせて、そいつには小金を渡して強盗成功と思わせ、自分の横領の罪もすべてそいつになすりつけ、隠した現金はまんまと自分のものにするというプランに巧みに成功! ごく普通のサラリーマンにしてはやるやん! で、警察の捜査上容疑者として連行された人物のひとりに実際の強盗犯がいたのだが、取調室のマジックミラー越しにカレンは「そいつではない」と否定。横領した金は一時的に銀行の貸金庫に保管する。が、自分が奪った金額と銀行から失われた金額のギャップに気づいた犯人は、じりじりとカレンに迫っていく……ということで、それぞれ互いにどちらの悪事も暴露できない関係、よってすなわちサイレントパートナー、はっはーん、タイトルはこのふたりのことを指しているのか、と気づかせるところが面白い。で、犯人はカレンを脅し、水槽のエンゼルフィッシをナイフで壁に突き立てまでして、カレンに命の危険があることを知らせるのだが、金はこっちが握ってるアドバンテージがあるためか、そんなことはお構いなしでひょいひょいかわしていくカレンは、養護施設に入れていた父のお葬式で父の看護を務めていたエレーンという女と出会う。ふたりは急速にイイ仲に発展していくのだが、エレーンにはまさか秘密があった……ってな感じで、こっちはこっちでサイレントパートナー。皆さんの思惑が交錯するスリリングなプロットが大変おもしろく、全体的に演出としての派手さはなしでどちらかというと淡白に展開していくのだが、一体何がどうなっていくのか気にさせるのが上手で、そのサスペンスに心奪われた! 役者さん的には個人的にカレンを演じるエリオットグールドという人が、なんかよーわからんけどよかった。どちらかというともっさりしてて、現代感覚で見るとぜんぜんイケてないし、小賢しい子悪党のはずなんやけど、全体的に何とも形容し難いチャーミングさがあるのが不思議。受け口のおちょぼ口がキュートだからかな? ただ、銀行強盗のテレビの取材を見て、ギャラリーたちが、出納主任イケテルワ〜〜〜みたいに騒いでるのはマジでナゾ! 僕にはエリオットグールドの魅力を説明する感性も語彙を持ち合わせておりませんわ。そして、彼のサイレントパートナーを演じるのが、なんと! 若き日のクリストファープラマー! この人、おじいちゃんになってもまったく雰囲気変わってなかったんやなー。ちょっと感動。本作でのプラマー氏は、強烈な暴力性を持った変人の役をしてて、風俗店で半裸の女をしばきまくって、足で顔を踏んづけるシーンもあるんやけど、今まで見てきた紳士のイメージとあまりにかけ離れてて、マジかよ、こんな役やってたのかよってなりました。怖い。あと、終盤のこの人の登場もあまりの意外さに拒絶反応が……笑 とはいえ最後のエスカレーターのシーンは映画史に残るであろう見事なシーンですね! あと、面白いのが、カレンが同僚ジュリーをダンスパーティーに連れて行くのに、迎えに行ったときの二人のやりとり。ジュリーがシンプルだがゴージャスなドレスを着て姿を現したとき、どこからどうみてもカレンはその姿に見惚れているのに、え? どうしたの? (アタシなんか変?)みたいなあざといリアクションするの、ほんま笑った🤣 僕としてはジュリーの良さはあまりよくわかりませんが、エレーンは魅力的だった。特に変装して銀行にひょっこり顔を出してるシーンはおもろかった。いい味出してます。そして本作一の凄惨なシーン…いいですね…実にいいですね……。いいアイデアです。そしてそれをうまいことカバーアップするプロセス! で、いろいろ話が二転三転してきたとはいえ、最後はさすがにちょっと読めてまうでぇ!と思っていたら、もいっちょおおおお!があって、想定以上に満足の一作でした。70年代後半のちょっとグリッティな雰囲気もいいすよね~。この時代のサスペンスは見る者を選ぶちょっとアダルトな空気感があるのが好きです。これは結構オススメ!
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