みかんぼうや

ウィッカーマンのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

ウィッカーマン(1973年製作の映画)
3.9
あの「ミッドサマー」の元ネタとも言われる、ある島のカルト宗教を題材にした本作。「ミッドサマー」にはかなり辛口レビューをしたくらい低評価をつけてしまったのですが、本作はかなり面白くて自分好みでした!

「ミッドサマー」は、まともな人が「敢えてカルト宗教の異端教徒の狂気の沙汰を描いた」ように見え、その狙いすましたかのような要素や演出が、どこか“作り物的“で、わざとらしかったり無理しているように見えてノイズになってしまったのですよね。そのわざとらしさや無理やり感が気になって、エンタメとしてもいまいち没入できず、少し引いた立ち位置で見ると、ただの滑稽な宗教コントに見えてしまったというのがあります。

本作ももちろん話はフィクションなのですが、ウィッカーマンの風習自体は実在していたもので、本作のもととなった宗教もあることと、劇中でかかる音楽(教徒たちが歌う謎の歌含む)だったり、映画そのものの演出やカメラワークがユニークで、エンタメ的でありながらも、北欧の宗教が本来持つ独自性や芸術性のようなものを表現しているように感じ、グイグイ引き込まれました。

「ミッドサマー」は、アメリカ人が映画用に描いた作り物のヨーロッパの宗教とするならば、本作はヨーロッパ人が本当のヨーロッパ宗教を描いた自然さを感じ、スッとその世界観に入り込めたのかもしれません。

また、「ミッドサマー」は“残酷に殺す”ことを宗教行為としていて、それがいかにも作り物の宗教に見えたのですが、本作はそういったこともなく、その点でも自然でした。だからこそ、ラストシーンで例の物体が見えた時の興奮がグッと増したように思います。

本作は2000年代にアメリカでリメイクされているようで気にはなるのですが、やはりアメリカ色が強いと、特に好みだった本作の持つヨーロッパの独特の雰囲気が損なわれているのではないかと思い、なかなか手は出なさそうです。
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