MikiMickle

ウィッカーマンのMikiMickleのレビュー・感想・評価

ウィッカーマン(1973年製作の映画)
3.8
ハウイー警部のもとに届いた匿名の手紙には、写真と共に、ローワンという少女が行方不明になったと書かれていた。
警部は、その島へと向かうが、誰も少女を知らないと言う。
その夜警部が見た光景は、外で交わる男女ら…
学校では、子供たちが、男性器に見立てたポールのまわりをおどりまわる。
そして、それを崇拝しましょうと教えている…
町にたつ男性器を象徴したモニュメント。
裸で火を取り囲み踊る少女ら。
教会は荒れ果て、人々は、セクシャルな歌を歌う。

この島は、土着の宗教が残る島であり、キリスト教の「復活」ではなく、
太陽神などをあがめ、多産を願い、「転生」を信じる島であった。

敬虔なクリスチャンの警部は、この乱れた宗教に憤慨しつつ、少しずつローワンの行方をおっていくのだが……

なかなか怪しげな雰囲気で、ホラーというよりもサスペンス、ミステリーに近いです。
しかし、後半はやはりゾクゾクします。
一人 対 大多数の恐ろしさ…ある秘密…

島の美しい風景の中、光の差すリンゴの花が咲き乱れる果樹園や、可愛らしい建物などが映し出される中、人を撮す時は下からのアップのアングルや小物などで島の人々が怪しくうつります。
知っているはずの少女を知らないとしらを切り、全く存在していないように振る舞う彼ら。1枚だけ隠された祭りの写真。裸で警部を誘う躍りを踊る女性。
クライマックスとなるメイデー祭(実際にある祭を参考にしたもの)で、皆が動物のお面をかぶり、警部を並んで見ている姿。
楽しげに行進する姿や、そこで何がおこるのか、最後までわからないのも不気味です。

そして音楽。
ヴァイオリンやアコーディオンの奏でるアイルランド風やスコットランド民謡や、フォークソング、牧歌的・童謡的音楽にあわせて、人々が怪しげな歌を歌います。なぜか、ミュージカル

題名のウィッカーマンは木でできた大きな人形の像。実際にケルト社会でのドルイド教で使われていました。 とある儀式に使います。
高台にそびえ立つウィッカーマンは不気味で、赤く燃える夕焼けと炎のラストシーン、本当にかっこよかったです。目に焼き付く…

島の領主を演じるのは、怪奇映画の大スターで、ドラキュラ役などで有名なクリストファー・リー‼‼
ドラキュラのイメージからの脱却として共同製作したもので、ギャラはなかったようです。生き生きと演じていました♪ドラキュラじゃないと、若干貧相(笑)&青髭と顔の長さが目立つ(笑)女装姿にかなりの違和感(笑)髪型が変(笑) でも、良いっ‼‼

特典影像では、低予算であったこと、5月の設定だけれど真冬に撮影した苦労、ブリック・エクランドの裸デンデコ踊りの後ろ姿は別人だった事、島民の協力、ドクロモチーフのお墓が本当にあるものなどが明かされてます。
しかし、この映画、熱心なキリスト教信者から見たら、かなり不快なものとなると思う。が、私は、いちいち目くじらをたてて彼らを批判する警部の方がおかしく思えてくる。土着の宗教を邪教って言うのも変な話だなと。日本もアニミズム信仰があったし。
正義感をもつ警部だけれど、自教を押し付けて差別してきた間違った正義感を持ったキリスト教勢力に感じ、怪しげな島民たちは、迫害されてきた民族として捉えられます。 その隠された対比とメッセージを感じざるを得ません。

そういった事も感じつつ、謎ときスペンスであり、全体の不安感と後半の緊張感と怒濤の展開が素晴らしいホラーでもあり、おかしなミュージカルでもあり、実際のドルイド教についても学べ、考え、怖さの中にも宗教の絶妙な面白さがあり、さらにおっぱ い盛りだくさんの、ヘンテコ映画。 カルト映画になるのがわかる。

ちなみに、これを見て、RadioheadのBurn the WitchのMVじゃん‼‼って。調べてみたらやはりオマージュを捧げているらしい♪
MikiMickle

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