炭酸煎餅

フォーリング・ダウンの炭酸煎餅のレビュー・感想・評価

フォーリング・ダウン(1993年製作の映画)
4.2
ある猛暑の日、工事渋滞に捕まって動くことの出来なくなった男。
車内に入り込んだハエ、種々雑多な雑音、車のバンパーに貼られた何かを主張するステッカー、周りの車に乗っている子供からの視線やふざけ合うバタバタした動き、工事の看板の電光表示、周囲のありとあらゆるものが男を苛立たせる。
遂に耐えきれなくなったのか、男は渋滞の中に車を残し、「どこへ行くんだ」と問う後続車のドライバーに「家に帰る」と言い捨てて車列を後にした……。

伝聞では「猛暑で我慢の限界に達した男が、次第に破壊衝動を止められなくなってエスカレートしていく」みたいな映画だという風に聞いていたんですが、実際に観てみると聞いた話から想像していたような「痛快感」は無く、一見ごく普通の一般人的な風貌をしていながら小さな事(内容自体は確かに「ありそう」な不満ではあるんですが)にも簡単に過剰な暴力を振るう男の様子に寒々しいものを感じる、ヒリつく空気の漂うサスペンス映画でした。

男が執拗に電話を掛ける元家族への執着の強さや、暴力へのトリガーの軽さの原点らしきものは終盤に答え合わせのように明かされるのですが、男が「普通ではなかった」事に「腑に落ちる」ようなものがあったのは少し現実の事件報道の構造と近いものが感じられ、ちょっと背筋が冷えるものがあったように思いました。
炭酸煎餅

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