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高原の情熱のmat9215のレビュー・感想・評価

高原の情熱(1944年製作の映画)
4.5
豪勢な映画だった。
オープニング、豪快な発破と斜面を転がり落ちる無数の小石。一転して、眺望のよい坂道を登るバスから降り立つマドレーヌ・ロバンソン。ここは清水宏の『明日は日本晴れ』みたい。コイバナの舞台は、山上のガラス張りのホテルと、邸宅というよりは城というべき富者の屋敷、そして荒々しいダム工事現場。
マドレーヌ・ロバンソンのコイバナに絡む男三人の中ではダメダメな二人の描写が冴える。まず、ピエール・ブラッスール。山道でバイクを疾駆する描写はコマ落としだろうか、ありえない猛スピード。芝居の台詞で人を煙に巻きながら、ロバンソンに早くここを出るように促す侠気もある。そして、ポール・ベルナール。一時は入れあげたマドレーヌ・ルノーへのすげない仕打ちとロバンソンへの執着。銃器愛好や場内の射的設備や縫いぐるみといった描写で幼児性向を見せる。城内の薄暗い空間に響く遊具や玩具の音。一方で、ホテル従業員のトントンや、老カップルといったコメディリリーフも欠かさない。
クライマックスの仮装舞踏会が祝祭的で素晴らしい。仮装した人々が手をつないで上下階を踊り回る祝祭を背景に、コイバナは転機を迎える。この豪華な場面の後にも、自動車事故や、ダム工事現場のロープウェイ事故といった見せ場が続く。ダム工事現場で浮きまくる仮装姿の人々。ロバンソンは自動車に乗り込むときから仮装を着替えており、心がダム工事現場に働くジョルジュ・マルシャルとともにあることを見せる。
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