似太郎

浪花の恋の物語の似太郎のレビュー・感想・評価

浪花の恋の物語(1959年製作の映画)
4.6
同じ近松門左衛門原作で、先に溝口健二の『近松物語』を観ていた所為もあってか、内田吐夢版は大丈夫かな?と心配しながら観たのだがこれはこれで傑作じゃあないですか!

溝口健二とも増村保造とも全く違ったアプローチの男女の心中もの。片岡千恵蔵が原作者である近松門左衛門を劇中に於いて演じている辺りもポイントの一つ。「劇中劇」というメタフィクショナルな実験的手法を取っている点が本作を傑出したものとしている。

さすがに巨匠、内田吐夢だけあって世知辛い世の中をバッサリと切り取る鋭いアプローチが全編に冴え渡っており見事。所々突っぱねたようなショットやカメラアングルなどにもキレがある。

主演の遊女役、有馬稲子はやっぱりキレイだった。忠兵衛役の中村錦之助も品格があり、全編を通して日本の原風景を観ているような錯覚に陥ってしまう名編である。
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