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あゝ声なき友のkossのレビュー・感想・評価

あゝ声なき友(1972年製作の映画)
3.8
寅さん俳優ではなく、戦争の語り部俳優の側面を持つ渥美清の畢竟作。自身のプロダクションを作って製作。渥美に共鳴したのか名優たちが次々に登場する。監督は今井正だが単線的な反戦映画ではない。反戦よりむしろ、人生や生き方の意味や価値が問われる。人には使命がある。世渡り上手な人と不器用にしか生きられない人。忘れることと拘ること。

戦友たちの遺書を8年間にわたって届ける男の前に現れるのは、知らなければよかった現実ばかり。男を動かすのは、約束ではなく生き残りとしての負い目。人生に勝つ者と負ける者。

渥美の物悲しや哀感は見事で、コメディ俳優ではない側面の代表作だろう。ただ、今井は好きな監督だが特徴的な乱暴な演出と、小室等の扇情的な音楽は少し残念。
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