一休

オー!の一休のレビュー・感想・評価

オー!(1968年製作の映画)
5.0
2020年10月に新宿武蔵野館で始まった「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選」で観る二本目の作品だ。
これも、最後に観たのは中学生だったはずなので、45年ぶりだろうと思う。
映画はいきなりレースシーンから始まる。1960年代の筒型のフォーミュラーカーからダブルウィッシュボーンのアームが伸び、タイヤが上下している画面だ。そこから2台のレースカーのタイヤが接触し、片方がスピンして大破、爆発炎上する。
このレースの事故の責任で、ライセンスを剥奪されたフランソワ・オランは、強盗王と呼ばれたポールの下でオランの名を取って「オー」と呼ばれ、強盗の逃走時の運転手を務めるまでに落ちぶれていた。
しかし、このポールも銃の暴発で死んでしまい、強盗の仲間たちはオー=フランソワを軽く見て、仕事から外してしまう。
フランソワは、付き合い始めた恋人ベネディトに良いカッコウを見せるために、自分でポールの計画を実行しようとするが、最初の自動車泥棒の時点で捕まってしまう。
数ヶ月を刑務所で過ごすフランソワは、途中から微罪で入ってきた浮浪者と入れ替わるように脱獄を果たす。
新聞・マスコミは、「オランは、ルパンか、カポネか!?」と題してありもしない悪行を記事にする。
それでもパリを離れず、ベネディトに未練を残すフランソワは、自身の計画で強盗を成し遂げる。
警察と近しい関係の新聞記者が口にした、フランソワの趣味から罠を張り、彼を追い詰める事に成功する。
銃撃戦で深手を負ったフランソワは、最後にベネディトに助けを求め、金を隠しているポールのアジトに向かうのだが、そこにはシュワルツ兄弟が待ち構えていたのだった。
というストーリーだ。
ベルモンドは相当のクルマ好きなのだろう。劇中に出てくるフランス車は、自身がハンドルを握るシトロエンDS19の他に、プジョー404ベルリーヌ、ルノー・アルピーヌA110、仕舞には自分の計画で強盗を成功させた若者が「俺は、(トライアンフ)TR-4を買うんだ!」と言うと、「アレは止めておけ、サスペンションが最低だ。」というセリフを入れるぐらいだ。(笑)
ジャン=ポール・ベルモンドの作品を観ると、ルパン三世をそこここに見られるのではあるが、この作品ではプロローグのフォーミュラーレースシーンで、すぐに頭の中でチャーリー・コーセイ氏の「Machine Crying~♪ YaPPaPPa PPapa~Ya♪」が鳴りだす。そう、ルパン三世第1話【ルパンは燃えているか?!】のレースシーンを実写で見ているかのようで、浮浪者と入れ替わって脱獄する部分は、第4話【脱獄のチャンスは一度】を彷彿させる。
いや、放映時期的に見れば、ルパン三世の方が後なんだがな・・・。(笑)
それだけ、「ジャン=ポール・ベルモンドがいなければ、ルパン三世はいなかった!」というわけだ。(´ー`)┌フッ
ベルモンドが主演の作品は、ハッピーエンドで終わる事が少ない。【ボルサリーノ】も最後は、ベルモンド演じるフランソワ・カペラも死んでしまったが、この作品のフランソワ・オランは、彼を見下していたシュワルツ兄弟を殺すのだが、彼を助けてくれようとしてくれたベネディトは死んでしまって生き残る。
決して、生きる事だけが幸せではないという見本の様な人生を2時間ちょっとの映画で魅せてくれるジャン=ポール・ベルモンドは、やはりルパン+カポネの暗い魅力を持った俳優なのかもしれないと思う一休なのであった。
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