TaiRa

オー!のTaiRaのレビュー・感想・評価

オー!(1968年製作の映画)
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アンリコのリリシズムとベルモンドの少年性は相性良い。

強盗団の逃し屋として使われてる元レーサーのベルモンドが成り上がろうとするピカレスクロマン。基本的にはハリウッドのギャング映画をなぞっているのだけど、そこにアンリコの作家性というか批評性が入っていて、結局は「悪ガキの遊び」だろうと結論付ける。ベルモンドがお洒落なネクタイを集めてたりするのも子供っぽさの表現として機能する。このベルモンドはレースという「遊び」を取り上げられた子供でしかない。犯罪者としては全く慎重さがなくて簡単に捕まっちゃうし、かと思えば凄い方法で脱獄しちゃう。一種の遊びとして全てを捉えてる。注目されれば浮かれるし、直ぐに調子に乗る。ヒロインのジョアンナ・シムカスがいつも通り超絶可愛くて最高。二人のイノセントな佇まいが愛おしい。事件を報道する記者も何だかんだベルモンドに魅了されちゃう。刑事たちの割り切った仕事人っぷりは良い対比。彼らはただの大人。暴力の代償を払うクライマックスの殺し合いも無駄に情緒を煽らずすっきりしてる。『冒険者たち』にしてもそうだが、男たちがシムカスを失う事がアンリコ映画では巨大な意味を持つのも面白い。彼女はイノセンスの象徴だから。
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