140字プロレス鶴見辰吾ジラ

スーパー!の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

スーパー!(2010年製作の映画)
4.4
【ワイルドカード:クリムゾンボルト】

《大好きだから再レビュー》

我らがジェームズ・ガンが「タクシードライバー」に影響を受けて叩き込んだ一撃。それこそ私のオールタイムベスト級。

トッド・フィリップスの「ジョーカー」はたしかに衝撃的な怪作、快作だった。しかしながら深く潜れなかった作品でもある。スコセッシの描いた80年代初頭をアメコミのヴィランを出汁にパッチワークで作り上げた傑作のように思えてしまった。ポール・シュレイダーの「魂のゆくえ」やそれこそスコセッシの「タクシードライバー」は深く心に入ってきた。

そしてジェームズ・ガンの「スーパー!」もそうだ。冴えない男で、人生の輝いた瞬間を絵にして壁に貼るという内向的な行いに、そこには結婚と警察に犯人の逃げ道を伝えるその2つのモーメントだけ。無駄に真面目に生きた人間で味気ない生活が滲み出る。そしてその妻さえドラッグの売人に連れて行かれる。彼は追い詰められて闇堕ちしたのではなく、天命を感じてクリムゾンボルトなるヒーローへと変貌する。それこそ間の抜けた風貌ながら抑制され続けたモノを吐き出す暴力によってヒーロー活動を始める。ダサくたって俺には深く入ってきた。エレン・ペイジ演じるボルティと相方になる少女が本当に可愛らしかった。ホームセンターのシーンは本当に人生の理想に近いエモーションだった。

だからこそクライマックスで魅せられた悲劇と残虐性、心の内を吐き出し、引きずり出すような正義の叫びが格好良かった。ラストシーンで彼の部屋を飾った絵の数々の中に上記の理想的なエモーションを見つけたときに止めどなく泣いた。

もはや作品になのか?自分になのか?わからぬよう涙が溢れた。決して異常な方向へ正義の舵を切るような人間でないと思ってはいるが、いつかや心の中のトラヴィス的なモノが解放されるかと期待はしている。それがポン引きに暴力制裁するダークヒーローか、倫理や道徳で殴りつけるクリムゾンボルトかはわからない。ただ自分の理想に近いモーメントの多い映画だった。