Ryoma

息子の部屋のRyomaのレビュー・感想・評価

息子の部屋(2001年製作の映画)
4.4
息子を失った父親。息子の生前、心理学者でもある父親が、思春期の息子との関係に時折り思い悩む姿は、患者への治療・対話を通して自らに対してもカウンセリングし向き合おうとしているかのようで、彼の真摯さや苦悩が窺えた。また、息子が亡くなった後も、患者との対話・コミュニケーションを通して自らの心を落ち着かせ自分の心に滞って離れない後悔や悲壮感に向き合おうとしているかのようにも見え、普段は感情を曝け出さない彼が時折り見せる取り乱す姿などから苦しみや葛藤、やるせなさが痛いほどに伝わってきた。
中盤、彼と息子との仲睦まじい関係性が垣間見れる、一緒に過ごす時間が愛おしくてたまらない。愛した人の存在は何ものにも変え難いと、喪失感に苛まれ嘆き悲しむ家族の姿を見ていると心の底から感じる。静かに進む物語の中に時折り流れるピアノの音色が心地よくて沁みた。
カンヌ国際映画祭(2001)でパルムドールを取った本作は、本当に丁寧に繊細に喪失感や悲しみが表現されていて、同時に家族のあたたかさや優しさも描かれていて素敵な作品だった◎
父親の後悔はきっとこれからも消えることはないのかもしれないけれども、時間とともに少しずつ自分を取り戻していってほしいな。
そして、溢れんばかりの愛情と優しさを受けて育った息子は本当に幸せだったんだろうな。
Ryoma

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