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息子の部屋のharunomaのレビュー・感想・評価

息子の部屋(2001年製作の映画)
3.5
22年前に観た時は、傑作であると思っていた(次年に朝っぱらからVHSでも流していた)が、
リマスターのこの映画を見ると、そこまででもない。
喪に服す、不条理な死を受け入れるまでのリアルさ(謎の1日だけの恋人の手紙やらも)はあるのだろうが、どう考えてもブライアン・イーノがいいだけであって、ラストは完全に前年のカンヌの「ユリイカ」をパクっていることは疑わざるを得ない。顔を見たことのない声と手紙、しかもあの赤いパーカーでの連れ立ったランニング風景は幻想であったわけで、ラカンよろしく分析が効いているとも言える。これしかないとは思うが、ナンニ・モレッティが精神科医という設定は、どこまでも胡散臭いのだが、時系列が撹乱し、家族は孤立し、混乱していく様は見事だし、バスケの試合中ボールを持った娘に、急を告げる父親の、表情だけで愕然と直接的に伝わってしまう、その時のあり方は素晴らしい。思えば、残された妹を軸に、この映画は後半あるべきだったのだが。そもそも息子役のキャラクターが描写が少なく、主体性がまったく見えない。彼は誰だとはなる。あくまでも親から見た息子ということに限られる。

途中から「愛の世紀」の方が見たいと思い始めると、なるほど第54回カンヌ国際映画祭、2001年5月9日から5月20日、コンペには以下のように豊作(オリヴェイラまでいる!)であった。どう考えてもゴダールと青山真治の圧勝である。腐った文化帝国主義の祭典というのはいつも通り。それでもラインナップにあるだけまだ良識があるのか。

赤い橋の下のぬるい水 今村昌平
DISTANCE/ディスタンス 是枝裕和
家路 マノエル・ド・オリヴェイラ
ピアニスト ミヒャエル・ハネケ
息子の部屋 ナンニ・モレッティ
ムーラン・ルージュ バズ・ラーマン
マルホランド・ドライブ デヴィッド・リンチ
ふたつの時、ふたりの時間 ツァイ・ミンリャン
ノー・マンズ・ランド ダニス・タノヴィッチ
ミレニアム・マンボ ホウ・シャオシェン
牡牛座 レーニンの肖像 アレクサンドル・ソクーロフ
プレッジ ショーン・ペン
月の砂漠 青山真治
恋ごころ ジャック・リヴェット
愛の世紀 ジャン=リュック・ゴダール
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