湯っ子

ボルベール <帰郷>の湯っ子のレビュー・感想・評価

ボルベール <帰郷>(2006年製作の映画)
3.8
ペネロペと姉妹には見えない超フツーな感じの女優さんが、友達にとても似ていたので、彼女のことを思い出しながら観た。彼女は27歳の時、当時付き合っていた彼からのプロポーズを断ってカトリックのシスターになった。それまでの彼女は、いつも何かを探してたように見えたから、彼女の決断にはとても納得した。今は遠くにいるので、年に1、2回の手紙のやりとりしかないけど、その様子から、彼女の選択は間違っていなかったことがわかる。

この作品には、ずっと死が匂っている。だけどそこには暗さや湿度は感じない。生と死が隣り合わせにあって、共存している。冒頭に「生きてる間から自分のお墓の手入れをする」という、この土地の風習が語られるけど、まさにそんな感じ。
むしろ、暗さや湿度を感じるのは生のほう。生きることの方が重苦しく、死の方が軽やかに描かれているような気がした。
アルモドバル作品を観るのはまだ3作目だけど、どれにも聖職者をdisるシーンがさりげなく入っていた気がする。その所以は自身の子供の頃の経験にあるみたいだ。私には詳しいことはよくわからないけど、彼が教会や聖職者を批判することはあっても、信仰心はずっと持ち続けているんじゃないのかなと思う。

あと、男性の存在感がとても小さい映画だった。本当に胸糞悪いクソ男が登場するに関わらず。
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