とうじ

ボルベール <帰郷>のとうじのレビュー・感想・評価

ボルベール <帰郷>(2006年製作の映画)
2.5
あり得ない話をすごいテンションで駆け抜けるという点では、いつものアルモドバル作品だが、本作はちょっとあり得なさすぎて、訝しく思う気持ちが勝ってしまった。

登場人物の見せ方(登場人物自体ではなく)もそこまで魅力的だとは思えないし、本作の筋書きの大胆で魔術的な迂回を、辛うじてリアリズムの片鱗にも触れさせながら成し遂げるためのコマとして使っているという印象を受けた。
キャラクター主導というよりは、今回はどこまで許されるだろう、という思いのままめちゃくちゃな物語を作った、というような監督の作為性が見え見えで、変な映画ではあるのだが、しばしばそのようなものに付随する捩れた魅力はあまり感じられなかった。

それはやはりアルモドバルがいささか真面目すぎるというのが一つの要因としてあると思う。
「こんなことをして畳めるのか」とワクワクさせられる序盤や、ペネロペ・クルスが歌うシーンなどは良かったが、やはり全体としての本作の味は、個人的には舌に合わない。
でも複数の女性がわちゃわちゃする話でありながら、一才恋愛描写が出てこないのは珍しく、そこは良かった。
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