広島カップ

キクとイサムの広島カップのレビュー・感想・評価

キクとイサム(1959年製作の映画)
4.5
人種差別問題を取り上げた作品といえば米国映画の専売特許のような気がしてしまいますが、邦画にもこんな力強くアンチレイシズムを叫ぶ作品があったとは知りませんでした。

福島の部落を舞台に同問題を真正面から捉えており、更に加えて男女差別も描かれている。

会津の山間の部落に暮らす横綱曙を小さくしたようなキク(高橋美恵子)は近所のガキどもに「黒んボ」と言われ虐めに会うと「黄色んボ」と言い返すパワフルで明るい小学生。同じく黒人の父と日本人の母との間に生まれた弟イサムと一緒に仲良く祖母(北林谷栄)の元で暮らしている。両親がいないのだ。

この子達は日本に居ても幸せになれないと考えハーフの孫をアメリカに里子に出そうと考える祖母。
「向かうサ行っても白と黒の差別があるんだぜ」と隣人に意見をされて迷う祖母。

マイナーコードのピアノ曲の劇伴が差別だらけの世の中の無情さを表現していて悲しくてしょうがない。
役に合わせて自分の歯を抜いて熱演する北林谷栄の聞き取り難い福島弁も悲しくてしょうがない。
辛い毎日なのに明るく健気に浪曲を一節演っては「広沢虎造のお粗末ゥ」とおどけるキクが悲しくてしょうがない。

なんで世の中には差別なんてものがあるのであろうか?とつくづく考えさせられる。スパイク・リーも思わず居住いを正すであろう日本が誇る優れた反人種差別作品。
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