じゅぺ

キクとイサムのじゅぺのレビュー・感想・評価

キクとイサム(1959年製作の映画)
4.8
キクとイサム、超絶大傑作。進駐軍の落とし子として生まれ、祖母と暮らす姉と弟。混血児への差別が描かれている。ほんとに辛い。明るく天真らんまんな子どものまっさらな心が、傷つけられていく。大人はなにも言わない。ただ、その態度から、子どもは敏感に感じ取る。ここにいちゃいけないのかなって。

キクとイサムがとなりの村でじろじろ見られたり、学校でいじめられたりということを、当然まわりの大人はよく思わない。可哀想だし、なんとかしてあげたいと思う。けど、あなたはあなたで良いんだとはなかなか言ってくれない。気まずそうな顔をして話をそらす。その態度が余計に子どもを傷つける。

大人たちは「このままではお嫁に行けないし」「お寺に出したらどうか」「これからは女性も自分で食べていく時代よ」という。この狭い村社会で、そして、肌の色で見える景色が狭くなってしまう時代に、「ありのままで」なんてきれいごとだし、それもまた無責任だろう。その気持ちもわかるから余計に辛い

いつもは明るいのに、ときどき見せる「自分はここにいちゃいけないのかな」という表情、寂しげな背中。理不尽だなあ。でも、必ずしも悲惨なだけではないのがこの話の好きなところ。最後の納屋のシーンはちっぽけだけど、ある種の神秘性すら感じさせて、ホロリときてしまった。疲れるけど素晴らしい映画
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