菩薩

臨死の菩薩のレビュー・感想・評価

臨死(1989年製作の映画)
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最終期の医療現場が抱える根本的なジレンマ、「命を救うとは?」に対する濃密すぎるドキュメンタリー。痛みを伴う延命、あるがままに任せた末の短命、繰り返されるカンファレンスとインフォームド・コンセントの末に導かれる「最善」とは、その最善に果たして意味はあるのか。医学の発展と共に救える命が増えた一方で、時に自らの意思に反してすら長らえる命がある現実、「出来ることは全て」が与える苦痛と、その先に呆気なく訪れる臨終、その繰り返しの日々に疑問を投げかける医師の言葉をがあまりにも痛切。結局は「生きる」とは何か?に辿り着く内容ではあると思う、患者達はほとんどの場合「生きる」では無く「生かされて」いる。自らの意思すら表明できない本人の代わりに、その死を受け入れる事の出来ない家族がいたずらに寿命を延ばしていく、観ているこっちが虚しくはなるが、当然そこに「絶対」などは無く、その選択を責めることは出来ない。自分はいざそうなった時に、身体中を管に繋がれ、言葉も発せず、苦痛と共に生きるなど真っ平ごめんだし、家族ともそんな話をしているが、果たして現実問題その環境に置かれた時に、すぐに決断が出来るだろうか。うちの爺ちゃんは最後脳死だったらしく、おかんがよく言ってたけど、どうやらその顔は穏やかな笑みの様な物で満ち、明日にも起き上がりそうな雰囲気すら纏っているらしい。そんな現実を目の前にして、勝手に命に終止符を打つ事が果たして出来るだろうか、どうしたって考えてしまう。ミスの許されぬ現場に従事し、ミスをせずとも失われていく命を相手にする医療従事者にはつくづく頭が下がる。とりあえず6時間「生と死」に向き合ったと言うこの経験は貴重だなと、そして俺のケツよ良く耐えた。ほぼ満席ってのがまた…みんな本当映画好きだね、お疲れ様でした。今の俺にはもはや一欠片の集中力も、鼻くそほじる力も残っちゃない…。
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