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ジャンヌ・ダークのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

ジャンヌ・ダーク(1948年製作の映画)
3.5
【ジャンヌ・ダルクから見る組織マネジメント】
ブリュノ・デュモン『ジャネット』、『ジャンヌ』公開前の予習でジャンヌ・ダルク映画を幾つか観ている。今回は、『オズの魔法使い』、『風と共に去りぬ』で知られるヴィクター・フレミング監督の遺作である『ジャンヌ・ダーク』の感想を書いていく。

テクニカラーによる豪華絢爛な彩色の集大成といえる本作は、群れによる高揚感の作り方の見本市となっている。例えば、市民が戦争一直線となっている様子を反映するために、対岸から河を撮り、手前を横切る人と河の向こうから歩く人を、フレームの外側で合流するような角度で撮ることによって強調している。また、夕陽のくたびれた色彩の中で、疲れ果てた人を並べることで、戦局が斜陽に向かっていることを示唆している。このような群れと色彩バランスの面で観応えがある。

本作はオーソドックスな作りをしており、ジャンヌ・ダルクが神のお告げを授かり、フランスを守る為に皇太子に自分を戦場へ連れていくよう懇願し、戦局を挙げるが、やがて政治的圧力によって嵌められ、魔女裁判で処刑されるまでの過程を丁寧に描いている。

その丁寧さから来る荘厳な作りが、イングリッド・バーグマン演じるジャンヌ・ダルクのスピリチュアルな側面を掻き立てる。例えば、皇太子を彼女が謁見する場面がある。彼はジャンヌ・ダルクを試すため、偽物を玉座につかせる。男装しているジャンヌ・ダルクは周囲から嘲笑される。偽皇太子も小馬鹿にしたように彼女と接する。だが、ジャンヌ・ダルクは彼の手に応じず、よろよろと空間を動き回り、やがて本物の皇太子に「あなたですね」と語りかける。この不気味な動きが彼女の魅力を掻き立てるのだ。

それにしても、本作を見ると、若いからしょうがないとはいえ、組織マネジメントが最悪で彼女の下に付きたくないなと思う。基本的に根性論であり、疲れている兵士に対して、「何やっているいくぞ!」と鞭打つ鬼畜さがある。彼女は勝つためならどこまでも頑張る、今風に言えば仕事が趣味な人なので、余計たちが悪い。そして論理的思考なく、ひたすら「神がそういっているのです」を根拠としている為、そりゃどこの馬の骨かも知らない若者が勝手に軍を仕切っている様子を面白く思わない人が出てくるのも無理ない。皇太子もひたすら弱腰で、彼女の味方になって二人三脚で国を率いる気がないので、これは組織マネジメントのダメな例と言えるでしょう。
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