クロスケ

ミッドナイトクロスのクロスケのネタバレレビュー・内容・結末

ミッドナイトクロス(1981年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

息絶えたサリーを抱きかかえたジャックの背後に夥しい数の花火を配置してみせるクライマックスの件は、そのセンチメンタルなBGMと共に、少々大仰でクサい演出に見えがちですが、この堂々とした嘘への居直りこそが、デ・パルマが映画作家として信頼に値する人間である証明なのです。

真俯瞰ショット、分割画面、スローモーション、照明や美術に見られる赤色に対するこだわりなど、本作でもデ・パルマらしさに溢れた演出がふんだんに堪能できますが、この露骨とも言える演出の数々を率先して採用することで、彼自身が「映画は作りものである」ということに充分意識的であることが伺えます。

虚構の産物を「真実」として提示すること。

それは映画の本質であり、醍醐味です。
そういった意味で、ジャックが水没した車の中からサリーを救出するシーンで、絶命した知事の体から流れ出た血が、車内に充満した水をみるみるうちに赤く染めていく描写の「もっともらしさ」にはワクワクするのです。

余談ですが、冒頭の劇中映画はヒッチコックの『サイコ』のパロディと思われますが、女子寮を舞台にしたこのB級感満載の学園スリラーの全編を観てみたい気もします。
クロスケ

クロスケ