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恋人たちの食卓のOASISのレビュー・感想・評価

恋人たちの食卓(1994年製作の映画)
4.0
妻に先立たれながらも、一流のシェフとして働き三人の娘を育て上げた老人の楽しみは、週末に豪華な晩餐会を開く事だった。
しかし、恋に悩む娘達はその行事を段々と煩わしく思い始めるという話。
アン・リー監督による「父親三部作」の第三弾。

「推手」「ウェディング・バンケット」の二作で父親役をしていたラン・シャンがまたまた料理人のお父さんとして登場。
彼がスピード感溢れる手つきで次々と食材を捌いていくオープニングから美味しそうなその料理に涎が出そうになります。
ゴマ油やスープの香りが画面から伝わってくるようで目にも耳にも楽しい。
それを「毎週毎週こんなのばっかりで飽きたよ」と言わんばかりの顔で食卓を囲む娘達の画というので関係性がばっちり伝わってきます。

ファストフード店で働く大学生の三女、航空会社のキャリアウーマンである次女、高校教師の長女と、三人の娘それぞれに出会いが訪れて、父親の料理そっちのけで恋に仕事に奔走する。
父親は、料理に興味を示さなくなった代わりに長女の友人の娘にお弁当を作ってあげるんですけど、それが中々和ませてくれます。
しかも、その事がバレても友人は父親を責めようとはせずに「お弁当を作ってくれてありがとう、でも娘には私が知っているという事は黙っといてね」と優しい。
それが後々の展開の伏線として和みつつも重要な場面になっていたりもする。

父の友人の死をきっかけにバラバラだった家族が集まり始め、しかもそこで明かされる父の重大発表が結構衝撃的で同時に伏線回収でもある。
上手いな〜と思いました。

散々と「味が分からなくなった・・・」とこぼす父親が娘の手料理を食べて味覚を取り戻す瞬間に、それまで自分一人だけの物だと思っていた料理が家族を繋ぐ大切な事柄だと気付く。
父親から家族へ、家族から父親へ。
「父親三部作」の締めに相応しい映画だと感じました。
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