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キャバレーのyaaaのレビュー・感想・評価

キャバレー(1986年製作の映画)
4.0
角川春樹監督というこもあって「金」と「権力」に物言わせて撮ったみたいな批判になりがちだと思うが、その「金」と「権力」が結構映画の魅力の良い方に作用していると思う。
開始早々の無理くりな長回しに映画的センスを感じられないし、雰囲気ものかよ・Vシネ(差別的発言)かよと出鼻くじかれる。
が、だんだん「金」と「権力」の凄さをじわじわ感じてきてかなりおもしろい映画であった。
舞台となるキャバレーは舞台があってあとは平場な空間で画的にはおもしろくないが奥のほうに長いカウンターバーがきっちりと作ってある。
朝のダイナーで食事のシーンではダイナーの向かいにボクシングジムが見えている。無国籍な町の雰囲気は漂う。
あんまり画面に映らない所もセット組んでると思うと「金」の凄さを感じる。ジャック・タチの「プレイタイム」のような贅沢感は滲んでいる。
「権力」では次々と背景の一部として出てくる角川映画のスターの面々に流石黒幕の偉大さを感じる。
そして驚くことにこの映画には素晴らしい名シーンが存在する。
坊ちゃんサックスプレイヤーが大人のディープな世界に踏み込んで本物のジャズを演奏できるようになるという話だが、そのヤバい境界線を越える時に出てくる。
三原じゅん子議員が本間優二さんに犯されながら物語から去るシーン。
脚本・田中陽造さんもあってか「鈴木清順かよ!」と声に上げそうになる笑いを通り越して幻想的なシーンは見所の一つだと思う。
理論でなくて感覚的なことが生み出したと思う。

最後のヤクザ集結もすごいエキストラと黒い車の行進なんかは「アウトレイジ」の先駆けだと思うし、ぶっきらぼうなカットの積み重ねなんかは初期の「北野武」映画のオリジンにも見える。

主役の野村宏伸さんがしゃべるとコントみたいになるのは演出力の無さかもしれないがそれを忘れさせる驚愕があるのも事実。
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