O次郎

ミス・ファイヤークラッカーのO次郎のレビュー・感想・評価

3.8
ビックリするぐらい「普通」の物語。
とある田舎町の冴えないアラサーの喪女が、それまでの人生の地味さを払拭するべく、周囲の人々に呆れられながらも町のミスコンでクィーンに選ばれるべくはしゃぎ回る、という内容。

映画的な誇張を抑えたリアルな演出で、ホリー=ハンター演じる主人公は生来の地味さを隠すべく髪を真っ赤に染めてるが、メアリー=スティーンバージェン演じる元ミスクィーンの従姉妹に比べて万人の認める美人とは言い難く、底抜けてポジティブなわけでもないので周囲の嘲笑や己の不美人ぶりに塞ぎ込んだりもする。見ていてなんとも痛々しいの一言。
おまけに終盤のコンテスト本番での出し物でも尻込みするし、他の出場者の女性陣も大してコンテストに熱意が無く、披露する特技も楽屋芸ばかり...。
同じミスコンを題材とした作品でも、大ヒットしたサンドラ=ブロック主演の『デンジャラス・ビューティ』と比べると、スケール感は別にしてもとにかく地味で熱量が無く、未DVD化作品なのも頷ける、というのが正直な印象である。

がしかし、「全てが空回りしてしまって酷く落ち込んだものの、それで憑き物が落ちたように気が済んで別の方向に歩いていける」という経験は誰しも経験するものであり、その親近感は大作には出せない色であるとも言える。
悲しいかな、大多数の人には大したドラマもなく頂点に立てず負けて軌道修正するのが人生の妙みであろう。


例えば、スポーツの国際試合で、最高の練習環境で修練した国内トップレベルの選手たちのチームが一勝も出来ずに敗退するとする。
その様を「あれだけの一流の人たちですら挫折するんだから、自分でも挫折するのは当たり前だ」と励みに出来るタイプの人には何かしら響くものがあるかもしれない、そんな作品。
O次郎

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