むっしゅたいやき

マカロニのむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

マカロニ(1985年製作の映画)
4.5
ほろ苦くも、にんまりと笑顔になれる作品である。
イタリアの名匠、エットーレ・スコラ監督作品。

スコラは伊国の市井に生きる人々の交情とそこに起こる感情の機微を通じ、「各々の生き方」への疑義を呈する。
『特別な一日』ではローマに暮らす日常に倦み疲れた男女のそれを、『バールに灯が…』では疎遠になった親子のそれ、そして本作では40年振りに再会した二人の男の生き方を対比させ、鑑賞者へ優しく問い掛ける。
ストーリーは決して安易な二項対立では終わらず、各々の生き方を昂め認め合いながらもやがてひとつの結論に収斂、又はそれを予感させつつ作品は終わる。

本作『マカロニ』も、凡そ上記スコラのプロットに則った構成となっている。
ここでは日々スケジュールを管理しつつ暮らす多忙なエリートビジネスマンと、市井に生きつつ「時間を無駄にするのは、いい」と言いながら夕陽に眼を細める劇作家の友情を通じ、二人の経てきた生き方を炙り出している。
スコラはここでも、二人の生き方に優劣をつけない。
金銭と人情をトレードオフさせる事で、二人を、物語を円く収めてみせるのである。
これは形を変えた"人生賛歌"だとも言えよう。

円熟の域に達したマルチェロ・マストロヤンニとジャック・レモンの絶妙な掛け合いや、ババ、タラリ、そしてタイトルでもあり『イタリア的な暮らし』をも象徴する「マンマのトマトソースマカロニ」が、何とも頬を弛ませる作品である。
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