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大樹のうたのfieldのレビュー・感想・評価

大樹のうた(1958年製作の映画)
4.0
オプー三部作完結編、部分部分の好みはあるけど総評としては大変素晴らしかった。

父性が目覚めるまでか。遠くから送金するだけでその日暮らしの放浪を続け妻オプルナの代わりに助かった息子カジョールを憎むオプー。稚拙だが妻の面影を見たく無かったのだろうな、本心とは思えない。世間体を考える性格でも無いオプーが一度も会った事も無いような状況だと愛情も責任も湧きづらかったろう。若さもある。

迷ってたオプーが友人の一押しで戻る決意を固め我が子の寝顔に父性が目覚めるまで、優しさ故にヤンチャな息子を叱れない所はあるが仲睦まじく肩車をする親子にやっと胸を撫で下ろせた。
大事な物を次々と亡くし悲運に見舞われた半生でそれでも一つになるのは運命というか人間の本能というか。考えさせられる物がある。

友人の誘いで田舎の結婚式に参加した先で出会うオプルナ。気が触れた新郎の代わりも運命の悪戯のようだったが大学を出ても家庭教師で食い扶持を繋ぐ流されるままの生活で、急に立ち止まって通常の幸せを選んでみたくなったのも分かる。
優し過ぎるくらい優しく、夫婦になる過程で生の豊かさ喜びを感じられる部分もある。妻が寝てる間に夜着の裾を結ぶのも妻は妻で紙袋を膨らませ悪戯するも微笑ましい。大事を取り里帰りした妻と手紙のやり取りも。恵まれた令嬢が安月給にも文句も言わずただ一緒にいる事だけを求めた品格を感じる愛、早産での急転直下が心苦しい。車で付けたマッチの灯火に見たのは家族の幸せか。
最後はしっかり根を張ったと思える締め括りだ。
今作のオプー役チャテルジーさんチャルラータで自由奔放な従弟アマルを演じた方か。全然印象が違くて気付かなかった。オプルナのシャルミタ・タゴールは詩聖タゴールの姪というのも冊子見て知ったが曾孫という記事もあった。家系図は複雑だったがサイフ・アリーカーンの母親らしく目鼻立ち整った正統派な美しさだった。
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