きゅうげん

豚と軍艦のきゅうげんのレビュー・感想・評価

豚と軍艦(1961年製作の映画)
4.8
今村昌平監督初期の傑作映画にして、“重喜劇”と言う作家性を確立した代表作。

ボンクラのチンピラ長門裕之、病弱なアニキ丹波哲郎、サイコパス加藤武、謎の中国人殿山泰司、しょぼくれ父ちゃん東野英治郎……。
↑もう面白すぎます。
仁義も矜持もなく振り回される駄目な欣ちゃんと、過酷な中でも芯の強い元気な春ちゃんの恋路に、ヤクザの養豚事業や女家族の家庭問題、胃潰瘍に苦しむアニキなどのサブプロットが、面白おかしく切なくつらく絡み合い、すべてはどぶ板通りのクライマックスに収斂してゆくのですが、カタストロフ的展開がありながらも、しかし米軍が寄港すれば、また男も女も享楽と退廃の闇商売に我を忘れる、このドン底の諸行無常感たるや。
しかし春子さんが前向きに横須賀を去るラストシーンには、悲劇のなかに一縷の望みが繋がったささやかな快さがありましたね。


とはいえ豚の丸焼きから入れ歯とか、「正当防衛!」銃撃戦とか、ホントくだらなくて最高です。
てか協賛の生命保険会社の広告が飛び込み自殺を考えるシーンにあるってのは、よくOKが出ましたね。

ところで個人的にこういう「踏んだり蹴ったりな最悪ピカレスク」×「急転直下の破局的展開」ってのに弱いんですよねぇ〜。もうそれだけで合格ライン超えちゃいます。
夜の横須賀を駆ける豚ちゃんたちも元気で100点!