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ザ・リングのcamusonのレビュー・感想・評価

ザ・リング(2002年製作の映画)
2.5
原作既読。日本映画版、日本テレビドラマ版鑑賞済み。

日本の映画版(1998年)がベースになっているようです。
全体的に平均点を上げる努力はしているし、
それは一定の功を奏しているのですが、
肝心の部分で、これじゃない感が大きいというか・・・

日本の映画版に比べると、予算も大きいですし、
役者も普通にしっかりしてますし、
映像も格段に美しく、映画らしい絵作りです。

ミステリの謎解き面では、時間の尺をたっぷり使っていて、
良くできていると思いますが、
手慣れた手つきによる、ありがちな作品になっています。
一方で、肝心のホラー部分で、どういうわけだか角が取れてしまい、
怖さがなくなっています。

日本の映画版で最も評価できる表現だと感じた、死者の表情ですが、
本作では、特殊メーキャップを頑張りすぎてしまっていて、
リアルの範疇を軽く超えてしまっています。
表情意外に目立った変化がないところが、むしろ肝なのに・・・

呪いのビデオ内の映像については、
日本版を真似た鏡の部分はいいとして、
独自に挿入した映像が、アート作品になってしまっていて、
おぞましさ、まがまがしさがなくなってしまいました。
呪いとしての色が薄まってしまい、
もろにミステリのヒント集というご都合ツール感が強くなってしまいました。

電話の声を聞かせたのは失敗でしたね。
地味にマイナスポイント高いです。腰砕けました。

あと、子供に絵を描かせたり、蝿が実体化したり、
途中で鼻血が出たりするのもやり過ぎで、
いろいろと伏線を張ろうとしているのが、
とても余計で、うるさい感じがします。

映画の中のシーンについて「これはどういう意味なの?」と問われた時に、
「これは実はこういう意味があって」と説明するためのエクスキューズを、
作品内のあちこちにちりばめました、という風に見えてしまいました。
企画を通すために仕方なかったのかなとか、余計な勘ぐりをしてしまいます。

原作小説の3部作の中でも「リング」のみがホラーとして成立し得たのは、
余計な説明をしなかったところにあると思うのですがね。


貞子の造形については、こちらが思っていた通りの西洋化で、ああなるほどなぁと。

あと、日本版では、エンディングで、迷うことなく爺さんを選んで車で向かうところに、
孫のためなら喜んで余生を捧げる爺さんのイメージなどが浮かんできたり、
その後のビデオの連鎖の可能性を考えたり、
複雑な余韻が味わえる訳なのですが、
本作では、誰かに見せるという条件が省かれていて、随分と印象が弱まっています。
子供にセリフを言わせてるのも蛇足です。
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