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牝犬のakrutmのレビュー・感想・評価

牝犬(1951年製作の映画)
4.0
妻娘を持つ生真面目な中年男性と美貌と肉体で男を虜にする踊り子の女性の関係を描いた、木村恵吾監督のドラマ映画。

生保で部長をしている生真面目な中年男性・堀江は、部下の行方を探るためにエミーという踊り子に会いに劇場を訪れる。その男性が持つ大金目当てで、エミーは兄と結託して男性を自分の虜にしてしまう。そして、男性は家族を捨て、エミーとともに東京を離れ、港町にキャバレーを開店する。エミーの自由奔放な振る舞いに、男性は苦悩を重ねていく。一方で、演奏者の男性との出会いをきっかけに、エミーに変化が起こる…

キャリア初期の京マチ子のイメージであるヴァンプ(毒婦=男を性的に誘惑して食い物にする女性)を演じた代表作となる作品。本作以降、『羅生門』(公開は本作の前年だが、ヴェネツィアで受賞するなど国際的に評価されるのは本作後)をはじめとして『雨月物語』、『地獄門』などの出演作品が国際映画賞を受賞することで、大映の方針によってヴァンプ女優というイメージの役は演じなくなった。そういう意味では、本作はヴァンプ女優としてのほぼ最後の作品であるといえる。なお、ヴァンプ女優として京マチ子を育てたのが、この木村恵吾監督である。

ヴァンプ女優としての京マチ子を見れる機会はそれほど多くないので、個人的には以前から見たかった作品。脚を強調したカメラワーク(京マチ子の登場シーンからして印象的)、官能的な肉体を強調した衣装、毒婦を強調したメークアップなど様々な演出に加えて、若い京マチ子のヴァンプ演技を享受できる。中年男性役の志村喬の鬼気迫る演技も凄い。ただ、エミーを変えるきっかけとなる演奏者の男性を演じた根上淳(彼にとっては本作が出世作らしい)の演技が下手くそなので、説得力に欠けてしまうのが難点。
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