あなぐらむ

乾いた花のあなぐらむのレビュー・感想・評価

乾いた花(1964年製作の映画)
4.2
俗に1964年の加賀まりこ、と呼ばれるこの年の「月曜日のユカ」(中平)と並ぶ、伝説の一作(公開も同じ1964年。実際はこちらは1963年製作)。
石原慎太郎の原作を、硬質な、文字通り乾いたタッチで描く、早すぎた篠田版現代やくざ映画。
賭博に生のスリルを感じるしか術のない女・加賀まりこと、ニヒルで厭世的なやくざ・池部良の切ない一瞬の邂逅。
石原慎太郎らしいインテリ的なひねくれたニヒリズムが、篠田のヨーロッパ映画風の構造的な映像にマッチして、東映にも日活にも撮れない文学の薫る仕上がりとなった。脚本も読んだが、結構そのまんまだ。

加賀まりこのまるで人形の様な渇いた佇まいも息を呑むが、何よりも池部良だ。この虚無に生きるやくざ者は高倉健や菅原文太よりも魅力的かつ鮮烈。昭和残侠伝とかで道行してる人とは思えないスーパークールさ。流石戦争帰り。
藤木孝もこの映画だけテイストが違う気がする。