ちろる

乾いた花のちろるのレビュー・感想・評価

乾いた花(1964年製作の映画)
4.0
同じく1964年公開の「月曜日のユカ」はおバカなロリータ風味もある小悪魔だが、こちらは凛とした色気もあるファムファタルといった感じ。
やはり加賀まりこ様は流石の可愛さでした。
賭博の世界もあまりに住む世界があまりにも異次元なのだけど、モノクロの世界で繰り広げられるこの時代の渋すぎる世界に何故か引き込まれるのはスタイリッシュなカメラワークのせいなのだろう。
自分が何者かも分からない、まるで抜け殻になったような気分で娑婆の生活に戻るがそれはまた同じ人生の繰り返しの始まり。
ヤクザ者が集まる賭博場にそぐわないようなひとりの少女に目が奪われて、己を見失うようにその一輪咲いた幻の花の香りを必死に嗅ごうとする。
ただそれだけのお話なのに非常にセンス良く感じるのは池部良と加賀まりこの美しさのおかげなのかも。

真夜中に暴走させる車に喜ぶ冴子、息を潜めて隠れた布団で笑い転げる冴子、鋭い手捌きで勝負する冴子。
人生を諦め、まるで半透明だった村木が、幻の少女冴子に出会った日からみるみるうちに生命力を増していく様子が実験的な映像も交えて表現されたユニークな作品だった。
ラブストーリーであるのだと思うが、べっとりとしたものではなく、あくまでも互いのプライドを保つクールな感じも好き。
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