シンタロー

婉(えん)という女のシンタローのレビュー・感想・評価

婉(えん)という女(1971年製作の映画)
3.7
大原富枝が土佐藩の女医、野中婉の生涯を描いた同名小説を、今井正監督が映画化。土佐藩家老、野中兼山の失脚後、当時4歳であった婉を含む一族は罪を着せられ、宿毛に幽閉される。外界との接触を断たれ、人として生きる事を許されない中、婉は兄弟達と医学、薬学を学んだ。抑圧された世界で自殺願望、近親相姦、発狂…鬱屈していたある日、父の弟子、谷秦山が訪ねてくる。以降、学問上の文通を許され、婉と一族にとって唯一外界との繋がり、生きる希望となった。そして最後の男系が途絶えた幽閉40年目、遂に女達に赦免が下り、婉は外の世界へ…。
強烈なのは幽閉生活の前篇。抑圧された兄弟姉妹が、盛りのついた性欲に苦しむ姿を包み隠さず描いたのが素晴らしい。「おなごの体には魔性の物が住んでいる」「狂ったのではない!あなたは人間なのだ」「私達は檻の中にいる珍獣と同じ」等々、名優達にとんでもない台詞の数々…何とも言えない色気、狂気に溢れてます。下手したら殺し合い、犯し合いになる所、学問の力、秦山の手紙が、ぎりぎりの支えになったということでしょうか。解放後が少しおとなしく物足りなく感じるのは仕方ないけど、婉という女の本質が描かれるのは寧ろ後篇。何度も発情するのに、それを抑えられたのは婉の強さ、知性だったのかな。あまりにも世間知らずで、一途で切なかったです。
岩下志麻は完全に開眼した感じで、本作の芝居は素晴らしい。激しいだけでなく抑揚があって、主演の貫禄十分でした。兄の緒形拳、使用人の北大路欣也に欲情するのは仕方ない。二人共若くてイイ体してます。絶妙な色気と狂気を魅せる姉・楠侑子は最高。妹の長山藍子もいつも通り、あざとい演技でイラッとさせてくれます。近年ばあちゃん役の常連だった佐々木すみ江までお色気発揮しちゃっててビックリでした。
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