山浦国見

婉(えん)という女の山浦国見のレビュー・感想・評価

婉(えん)という女(1971年製作の映画)
3.7
40年も幽閉された婉や、その家族の物語。

御赦免のシーンから始まる。そして常に陰鬱な雰囲気に包まれる。

諦め、嫉妬、絶望、発狂、自害。

その禍中に於いて、婉は逞しく生きて行く。

女が強いのでは無い。強い女もいる。弱い女もいる。それは男も同じだ。ただそれだけの事だ。

この作品に登場する人物たちは皆、時代に翻弄される。その中でも婉は強く、どんな逆境でも挫けない。へこたれない。生への渇望を頼りに、生き抜いて行く。

婉の瞳には何が映っていたのか。
僅少な希望か、それとも陽炎のような愛か。

婉という女は、銀幕の中で、確かな生命の躍動を見せてくれた。

生と死の狭間で葛藤し、鬩ぎ合う、男と女の物語。
山浦国見

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