澄み切ったアルプス山麓が背景のアヨシー湖畔の風土に似つかわしくない視姦の甘美
エリック・ロメール
「クレールの膝」
結婚を間近に控えた中年外交官(ジャン=クロード・ブリアリ)が、まだ成熟しきらない10代の女の子の膝に触れる。
ただそれだけの話。
彼の卑猥な妄想に入り込み、その機微を眺めつつ、成り代わる快楽。
その楽し気な視姦は観客に享楽を与えて止みません。
何という健啖ぶりか。
罪もなければ善もない、ただ妄想と快楽が画面に開口しているさまは澄み切ったアルプス背景のアヨシー湖畔の風景に似ず可笑しくなるくらいに甘美です。