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007/死ぬのは奴らだのtjZeroのレビュー・感想・評価

007/死ぬのは奴らだ(1973年製作の映画)
3.4
藤圭子さん(宇多田ヒカルのお母様)のヒット曲の歌詞に、♪15~16~17とアタシの人生暗かった♪ってのがありますが、007シリーズに置き換えると、⑦~⑧(本作)~⑨作目あたりが”冬の時代”に当たります。

この3本を演出したのが、ガイ・ハミルトン監督。③作目『ゴールドフィンガー』の栄光は遠く、大英帝国の敏腕諜報員である007の優雅で洗練された冒険を描くのが本筋であるのに、なんとも安っぽい、B級コミックのような仕上がりになってしまっているのです。思えば③も、ゴールドのゴージャスなイメージでチープさが金メッキされていたのかもしれません。

ただ、本作には光明(雪どけ)もあります。3代目ボンド、ロジャー・ムーアの登場です。
ショーン・コネリーより実年齢が上、ということもあり、ルーキーとは思えないハマりっぷり。高級なスーツが採寸直しなくビシッと似合ってるがごとく、です。
特徴的なのは、人を食ったような、シレッとした表情と物腰。ユーモアあふれる作品にはピッタリなのですが、マンガのような下世話なギャグよりも、高級な社交場でボソッとブラック・ジョークを呟く方が向いています。
…その意味でも、ムーアの個性が本領を発揮し出すのは、大作化が進んだ⑩作目『私を愛したスパイ』以降になります。

本作のもうひとつのウリは、なんといってもポール・マッカートニーによるスピード感あふれる、ドラマティックな展開の主題歌。こればっかりは、文句なく素晴らしい。シリーズ全体でもかなり上位に入ります。
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