うにたべたい

日本以外全部沈没のうにたべたいのレビュー・感想・評価

日本以外全部沈没(2006年製作の映画)
2.9
日本を代表するSF小説・日本沈没を"原典"とするパロディ小説の映画化作品。
原典の日本沈没は2022年2月現在、2回の映画化、2度のドラマ化、加えてアニメ化、漫画化と、多数メディアミックスされています。
本作はそんな日本沈没のファンから見ると悪夢のような作品で、そこにバカ映画の巨匠・河崎実がメガホンを取ることで這い寄る混沌のような様相を呈したものとなっています。

本作は元は『日本沈没』のベストセラーを祝って、SF作家たちが集って飲んでいた時に出た星新一の悪ふざけだったそうです。
「日本沈没がヒットしたけど、日本以外全部沈没した方がスケールがでかいからヒットもでかいんじゃないか」 みたいな話が出たのかどうかわからないですが、それを聞いた筒井康隆氏が書きたいと言い出し、小松左京氏の許可をとって書いたという逸話があります。
飲みの席とはいえ、日本を代表するSF作家陣が集まって書かれた一大スケールの小説であり、さぞやすごいものになるのだろうと思ったのですが、正直なところ読んで字の如く酔っ払って書いたような内容でした。
絶対真面目に観てはいけない作品ですね。

ストーリーは、ある飲み屋で、元・各国首脳や、元・国連事務総長が、日本の総理大臣に媚びへつらっているシーンから始まります。
なぜそういうことになったかというと、そこから3年前のある日、アメリカが突然海に沈んだことを皮切りに、日本以外のすべての大陸が突如沈み出したためでした。
田所博士によると、北極と南極の氷が溶けたことで海水面が急上昇し、世界中の大陸が水没したが、日本列島だけはマントルの移動により隆起し、海水面に出てきたという。
日本以外の外国が水没したことにより、外貨が紙くずとなり、日本に避難した外人は各地で犯罪によって食いつなぎ、路上にテントを張って暮らすという生活を余儀なくされます。

他国が沈没する特撮は、元作品のスペクタクルとは比較にならないくらいしょぼいです。
『日本沈没』での日本が沈没するに至る解説に比較してしまうと『日本以外全部沈没』するに至る説明も非常にやっつけで、SF的考証もへったくれもなく、また、実際起きてしまうと日本に殺到する世界の人々により地獄のような状況だと思うのですが、そういった検討も一切なしという、ある意味潔い作品だと思います。
兎にも角にも日本以外は沈んでしまい、日本は他国民を受け入れて、なんだかんだでとりあえず移住できたという状況の様子。
なんだかんだ移住できるわけがないと思うのですが、そこは深く考える作品ではないですね。

結果、当然人口密度は限界まで上昇し、島国根性が強い日本国民は急に増えたガイジンを毛嫌いしています。
そのため外国人を雇い入れる店も少なく、外国人女性は元ハリウッド女優であっても一晩3000円で街頭に立ったり、一般的なサラリーマンの家でメイドとしてこき使われるという状況で、外国の方が見ると怒り出しても仕方ない内容です。
日本国内でカーストのようなものが生まれており、見る人によっては不快に感じる可能性があると思います。
そういう意味で、酔って書いた話をうっかり映像化してしまった作品です。
酔っ払いの下品なセクハラや荒唐無稽な与太話にノれる方向けだと思いました。

ちなみに、外国人男性は、作中で人気作となっている特撮番組・電エースに踏み潰されるエキストラとして使われることがあるという扱いでした。
なにげに電エースが出てきたり、河崎実がカメオ出演しているのにはクスリとします。
映画としては相当ひどいです。割り切った視聴をおすすめします。