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戦略空軍命令のFilmomoのレビュー・感想・評価

戦略空軍命令(1955年製作の映画)
4.0
①ジェームズ・スチュワートは米空軍大佐の肩書を持ち、SAC(戦略空軍)を視察した時に感銘を受け、SACの重要性、その使命を国内外に広く知らしめることが平和均衡に役立つと考え、パラマウントの幹部に企画を持ち込み、その熱意に押されて製作された、と公開時のパンフレットに書かれている。当初は「連邦警察」(FBI)、「頭上の脅威」(仏海軍空母)のような意図のプロパガンダ映画だと思っていたが、そうなるとプロパガンダであることは確かだが、その着想が国家ではなく一俳優からというのは驚きだった。②空軍の最新鋭爆撃機のプロパガンダという題材に対し、脚本には原作者のバーン・レイ・Jrのみならず、「グレン・ミラー物語」(同じくアンソニー・マン、ジミー、ジューン・アリスンのコンビ)を手掛けた脚本家のヴァレンタイン・デイヴィスが参加、同作を髣髴とさせる、もう一つの軸足、「夫婦愛」がしっかりと描き込まれた。とにかくこの映画ではしつこいくらいにジミーとアリスンは抱き合う。それが本当に仲の良い夫婦に見える。爆撃機と夫婦愛という、一見奇妙な取り合わせが、好演の二人のお蔭で全く破綻のないドラマになっている。③アンソニー・マンは、ややもすれば大味で、爆撃機をいろいろな角度で映せば良いだけの題材ながら、とにかく細かな演出に神経を注ぐ。初めて兵舎に引っ越した夜、爆撃機の爆音を怖がったアリスンがジミーにしがみつき、爆音と同時にブラインドが震える場面、ジミーの適性検査中に何度もアリスンが電話をかけてくるギャグ、コックピットから見える夕陽の美しさ(スクリーン・プロセスが見事)、ジミーが子供の名前を考えてほしいというアリソンからのメッセージを受け取り、電報で"Can't think of any name but hope everything fine.”(何の名前も浮かばないけど、無事を祈る)と送ったのを、アリソンが"Can't think of any name but Hope.Everything fine."(ホープ以外の名前は考えられない)と受け止めて、娘にホープと名付けるくだり(アメリカ人ですらこうなのだから日本の学生が英文試験で満点を採れないのは許してやるべき)など、シナリオが良い上に、演出が細やかなのが素晴らしい。勿論B36超大型爆撃機の雄姿もビスタビジョンに大迫力で映し出される。題材が何であれ、こうしてきっちりと仕事をする、この時代のアンソニー・マンやロバート・ワイズ、ヴィンセント・ミネリといった職人監督を私は愛する。
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