櫻イミト

美しきセルジュの櫻イミトのレビュー・感想・評価

美しきセルジュ(1957年製作の映画)
3.5
クロード・シャブロル監督のデビュー作。ヌーベル・バーグの長編第一号とされる。

後のシャブロル監督の犯罪モノとは違う、ナイーブな青春映画だった。

【物語】
パリジャンのフランソワは病気療養のため故郷の田舎町に帰省する。そこで幼馴染の友人セルジュと再会するが、優秀だった少年時代の面影は遠く、デキ婚(死産)の妻と所帯を持ち酒浸りの生活を送っていた。何とか立ち直らせようと声をかけるフランソワだったが、卑屈に凝り固まったセルジュは耳を貸そうとしないのだった。。。

”ヌーベル・バーグ”とは世代のことであり、作風は師と仰いでいたロベルト・ロッセリーニ監督のネオ・リアリズモに近い印象だった。シナリオも映像もデビュー作とは思えないほど安定していて、物語に集中して楽しめた。想像力を喚起させるラストは後のシャブロル監督の作品にも通じるものがあり才能を感じさせる。ストーリには監督自身の半生が反映されていて、ロケ地も監督が子供時代を過ごしたフランスの田舎町とのこと。デビュー作らしい思いが込もった一本。

シャブロル監督はこのデビュー作を27歳で手掛けたが、2年後に大島渚監督がデビュー作「愛と希望の街」(1959)を同じく27歳で制作している。両作共に”貧富と人間関係”を扱っているのが興味深い。

※「遺産相続したマヌケ」な役でシャブロル自らがワンカットだけ出演

※ジャック・リベットという名の人物も登場するが本人ではなく俳優

※同監督「いとこ同志」(1959)の姉妹編で主演二人が引き続き主演
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